ドッペルゲンガーーの作り方 | 今を生きる高校生

ドッペルゲンガーーの作り方

ドッペルケンガーの作り方

 

私には、非常に変わった母親を持つ友人がいる。

その友人の母親というのは、非常にお喋りな人で

いつでも友人の家に遊びに行けば、家事そっちのけで止まらないトークを披露してくれた。

若い頃でもそれが楽しめた程なので、今考えても余程のお喋り上手といったところだろうか。

下手の横好きではなかった為か、私やその他の友人達もその母親の話には良く耳を傾けていた。

 

この話は、その時その友人の母親が迫真の語り口で教えてくれた話だ。

そして、これが引き金となったかは定かで無いが、これ以来変わってしまった事がある。

 

 

ある夏休み、その日も友人宅へ友達3人を連れて上がり込んだ。

 

ドッペルケンガーって知ってる?

 

この一言で始まった、その日は38℃を越える真夏日だった。

 

 

同時流行っていた少年漫画で、ドッペルケンガーを題材にした物語がそこには描かれており


 

私達は自身のドッペルケンガーを一度は見てみたいと

子供特有の好奇心に満たされていた。

 

そこにお喋りお母さん登場!

当然、ドッペルケンガーについて話を聞いてみた。

すると・・・

 

君達、ドッペルケンガーの作り方って知ってる?

 

勿論知らないし、そんな言われ方をされては、知らずには居られない。

 

いい?真夜中に、部屋を明るくして、全身が映る鏡の前に立つの。
そのままジィーっと同じポーズのまま・・・そうね、五分くらい立ってるの。
その時、鏡の中の自分をずっとみているの。
五分経ったら、部屋を暗くして何も無い壁を見ると、自分の影が残像になって見えるのね…

それを、何回か繰り返して一週間続けると…段々…自分の影が……

影じゃなくなってくるのが分かるの。

最初はボンヤリしか見えなかった自分の影が…段々ハッキリした形になってくるの。
何色か分からなかった影の色が…段々と……自分の色になっていくのがわかるわ。
そこまできたらあと少し…そのまま続ければ……やがてその影が動くようになるの。
残像だったはずの影が、少しずつ…自分の意思で動き始めるの……
そして、その影が完全に自分の色、形になって…ちゃんと動くようになると…
必ず、こう話しかけてくるの…

 

「自分の体を見てご覧…今から、君が影になる番だ。」

 

そういわれて自分の体を見ると、黒くて半透明…
そして、最後自分の影だった自分を見ると、そこには自分が居て
自分は、その影だったはずの自分の残像になり…

やがて消えてしまうの。

そして、次の日から…その影だった自分が自分の代わりになって生活するのよ。
これが、ドッペルケンガーの作り方。
絶対、やったりしちゃダメよ?

 

 

今でもこの手の話がダメな人に聞かせると怖がるこの話。

幼い頃だったためか、私も表面は平静を装っていても、実は怖くて仕方なかった。

 

この話を聞いて以来、しばらくは鏡が怖くてみれなかった。


 

だが、よくよく考えて見れば、当時私の家には全身が映るような大きな鏡など無かったので

私はその話のことも段々と忘れていった。

 

 

だがある日、その話を聞いて二週間くらいが経っただろうか。

あの話を聞いたあの日、一緒に話を聞いていたS君が三日間学校を休んだ。

入学してからこれまで一度も学校を休まなかったS君だっただけに、クラスの皆が心配した。

休み始めて四日目、S君が登校してきたので、皆が心配の言葉をかけたのだが…

それまで、陽気で活発だったS君が、それ以来殆ど口も利かない

控え目どころか、生きてるかどうかさえ分からないような子になった。

 

以前、S君の家に何度か遊びに行ったことがある。

あの頃の家庭にしては洋風な家の作りで、各部屋に大きな鏡があった。

勿論、S君の部屋にも、子供の全身を映すには十分すぎるくらい大きな鏡があった。

 

私は、友達数人とあの話を思い出し…まさかと思ったが、結局S君には聞けずじまいだった。

 

そしてそのまま卒業。

その後、S君と会った者や、目撃した等の情報は聞いた事が無く…

当然同窓会にも来ないし、電話番号も変わり、家も引っ越したようだ。

 

果たして、あの時S君は、本当のS君だったのだろうか…